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挿絵~小説~

~王家の船~ ・神風型宇宙駆逐艦ハヤテ

数年前に亡くなった友人の遺作です
10代の頃に書いたものなので
多少時代が古く感じられるでしょうが
宜しければ読んで見て下さい


亡き友に贈るメモリアルストーリー。


西暦2998年、突如として地球はガルスグレーサーと名乗る
異星人に侵略戦争を仕掛けられた、そして圧倒的な科学力の差により
危機的な状況に陥る、主人公たちは新型の戦艦に乗ることになるが
それは小型の駆逐艦ハヤテ、がっかりする主人公達だが
ハヤテに乗り込むと、そこは全ての物体が10分の1になっている
世界だった、本当のハヤテは全長1300メートルを超える巨大戦艦だった
見た目は駆逐艦、中身は巨大戦艦、敵を欺くにはまず味方から
地球を防衛するために真の実力を隠して活躍するハヤテを御覧下さい。


題名ー ~王家の船~
    ・神風型宇宙駆逐艦ハヤテ
       PAT0・1


一本の道がある


その道の先には山があり、お日様が昇り始めていた


そしてその日の光に向かって一人の少女が
走ってくる、それはトレーニングウエアを着た
大城真耶だった。


身長は高くもなく低くもなく、努力の甲斐あって
引き締まったウエストラインと体重をキープ
している、顔が丸顔なので体型までそう
思われがちなのが恥ずかしい御年頃だ


やがて対向者のランニングをしている
お年寄りと真耶はオハヨウの挨拶を交わす


「お早う御座います」


「ああ お早う真耶ちゃん・・今日はお兄さんは
来てないんだね何時も一緒なのに」


真耶はその場で足踏みしつつ
「ちょっと御寝坊しちゃって・・仕事で
疲れているみたい」


それを聞き老人が
「おやまあ~それは大変だね」


誠矢は基地のシュミレーターで12時間も
訓練を受けていた
ハヤテの性能を完全に引き出すため
日夜努力を欠かさない


防衛機密に抵触する事は伏せて
真耶はお爺さんに心配を掛けないように
丁寧に説明した


それから2時間後に誠矢は短い睡眠から覚めた
酸素治療ベットの寝心地は良好で
体の疲労は完全に抜けている


防衛基地の最新鋭艦ハヤテのスペックは
想像を絶するものだった、多少の無理を
しない限りその能力を引き出すのは
不可能だった。


毛細血管破裂や微細骨折・・位は
修復出来たようだな
誠矢はドクターAIから色々と説明を受けた
余り無茶をすると死ぬぞと遠回しに
言われてしまった


死んでしまっては地球を守る事も
キャサリンの仇を打つことも出来なくなる
本末転倒だ・・気を付けるよ出来るだけ


時計を見るともう8時だった
誠矢は着替えると基地の食堂に向かう。


食堂では真耶が朝食を取っていた
「あっ 誠矢兄さんお早う」


誠矢も返事を返す
「ああ お早う真耶」


謎の敵の動きが活発な今
誠矢達は基地で寝泊まりしている
当然ハヤテの乗務員は全員
基地で待機状態だった。


そして今朝は大きな作戦を遂行するため
勝艦長から直接任務の説明がされる予定だ


説明会場は基地の飛行場に隣接する
VIP用特別観覧席(プレミアムルーム)とされた


説明会のギリギリの時間になって
ハヤテの主要メンバーの最後の一人が
基地の飛行場に着陸した


そしてヘルメットを脱いで機体から降りると
そのまま走って勝艦長の前に行き
防衛隊形式の敬礼をする


「ハヤテ通信隊長に任命され太陽系防衛隊
イギリス局より派遣されました
ジョン・スミス通信隊長です」


勝艦長が敬礼を返し
「良く来てくれた君の優秀は聞いている
早速だが今から重要任務の説明をするから
席に着きたまえ」


「了解です!」
彼はそのまま艦長からの説明を受けるために
ハヤテクルーのメンバーズの列席に加わった


誠矢達はこの新たな飛び入りにあっけに
とられるが、それよりも
ジョン・スミスと名乗った
その男は誠矢達の様子をよそに
何処吹く風と敬礼をしながら愛嬌を
振りまいている その時


ジョンの視線が真耶で止まり釘付けとなった
「何て可愛い天使・・オー マイ・ビーナス」


そして勝艦長から以下の作戦が告げられた
「アステロイド空間に敵の主力を集め
全地球艦隊で此を奇襲し木星空域を奪還する」
そのためにハヤテを囮に使うと言う事だった


今里真一VXレオールド達長が
「率直に言ってその作戦が成功する確率は
一体いくらですか?」


その問いに勝艦長は不適な笑みを見せる
「コンピューターの計算によると作戦の
成功率は12パーセント・ハヤテの
生還確率は0、3パーセントと言うことだ」


今里は苦笑いしつつ
「そんなに低いのか・・」


下田明 陸上戦闘隊長が
「そんなに悲観するなよ俺だって
成功率6パーセントの作戦を
こうして生き残ったんだぜ」


この言葉に今里は笑いながら
「勘違いするなよハヤテの評価が低すぎて
思わず笑っただけだ」


下田は「ああ成るほどな」とニヤリと笑う


恐らく防衛隊のなかでもハヤテの情報は
極秘扱いなのだろう。
ただの駆逐艦一隻に対する
低評価だとしたらまあ妥当な線だ


誠矢はここ数日の訓練でハヤテが
ただ一隻で戦局をひっくり返す程の
戦力であると確信していた。


それにしても銀河連邦のどの星が
地球に援助をしてくれているんだ?
ハヤテみたいな船をおいそれと渡すとは
思えないんだがな~


誠矢の推測ではハヤテは今の所
地球以外の文明圏の船と成っている
・・・・だが


銀河の軍事バランスがひっくり返る
ハヤテの底知れぬ力がその推理を否定する
そこん所が悩みの種となっていた。


そんな事を考えているうちに
勝艦長の話が終わった
尊敬する艦長の話をそんな風に
聞き逃すとは・・其れほど誠矢はハヤテに
夢中になっていた


その時だ・・・突然だった・・真耶が
その席で、いきなり顔面蒼白になり
頭を押さえながら意識を失い混沌したのは


「真耶どうしたんだ!?」
誠矢がそう叫んで真耶に駆け寄る
「しっかりしろ真耶!!」


そこに一人の男が口を出した
「駄目だ下手に動かすな!そっと
イスの上で寝かせるんだ」


「貴方は確かDr.北本」
ハヤテの艦医である
北本医師の判断に従う事にした誠矢は
後ろの席にいた崎さんと二人で真耶を
イスに寝かせた



Dr.北本は真耶の脈を時計を見ながら計り
そして瞼を開いてペンライトで反射を
確かめる 真耶の瞳に青白い光の模様が見える
(紋章が・・同調の影響か?)


「真耶は大丈夫でしょうか先生!?」
誠矢と騒ぎを聞きつけた響竜一
それに崎景子と坂巻進吾が心配そうな顔をして
Dr.に視線を送る


Dr.は何かを察しながらそれを表に出さず
「・・これは軽い貧血だな・・心配に
及ばないよ」 と そう応えた。


全員顔の表情が緩む
「そうですか良かった!」
「ありがとう御座います先生」


Dr.北本は誠矢に
「真耶君は暫く安静にしておいたら
回復するだろうからそのまま少し
横に寝かせて起きなさい」


「ありがとう御座いますそうします先生!」
誠矢のその安心した顔を見ないようにし
Dr.北本はその場を後にした。


暫くして体調が回復した真耶を自室に送り届け
誠矢は響と一緒に基地の談話室に行った。


そこで真耶の体調について響と話しをしてると
金髪碧眼のあのジョンスミスが気さくに
話しかけて来る
「ヤア、大城戦闘隊長」


「君は確かジョン・スミスだったな?」
ジョンは「ここ良いかい?」と言うが早いか
誠矢の前の席に着く。


「何か用か?Mr.スミス」
誠矢にしてみれば会ったばかりで
この男の距離の詰め方が解らない


「君と彼女がどういう関係なのか気になってね」
誠矢は「彼女?」・・とトボケたが
隣の席の響はその彼女の事が真耶だと一瞬で
悟ってジョンを睨んだ


誠矢は着任早々ハヤテのメインクルー同士で
喧嘩になるのは避けたかったので
そんな義理ないが質問に応えてやることにする
「真耶の事なら俺の妹だ」


ジョンは其れを聞きニヒルに笑うと
「ああ成るほどそれなら彼女との距離の
近さにも納得行くよ・・そうかお兄さんか」


誠矢は嫌な顔をし「会っていきなり君から
お兄さんなんて呼ばれる筋合いはない」


響は激しく頷き それに同意しする!
ジョンはそんな響を鼻で笑い
「それはそうだけど・・近いうちに
隊長の事をお兄さんと呼ぶことに成るつもりだ
楽しみにしておいてくれ」
そう言い残してジョンは去っていった


慌てて席を立ちあがると
響はその言葉に動揺して声が裏がえる
「オイコラ待て!そりゃどう言う意味だ!?」


少し間があって響は席に座り直した
「何なんだよーアイツは~!」
そう言って机に突っ伏し頭を掻き毟る


「お前も少しはアイツみたいに積極的になれよ」
誠矢にそう言われ響は犬みたいに唸ってる
ヤレヤレ・・罪な女だな真耶も


自分の部屋に戻りソファーに横になって
休む真耶は夢を見ていた


幼い頃、両親を亡くした私を 近所の
いじめっ子達が私の髪を引っ張ったり
親が居ないことをバカにして泣かされていると


怒った誠矢兄さんが駆けつけて
虐めていた子達を懲らしめてくれたの
翌日からその子達は全員


誠矢兄さんに会たびに丁寧なお辞儀をして
通るようになった、あの時の誠矢兄さんの
格好いい姿を私は未だに忘れられない
本当に白馬に乗った王子様に見えたんだから


真耶はいつの間にかそんな昔の夢を見ていた
倒れてから意識が朦朧としていた真耶だが
部屋に戻ってからも意識が回復するのに暫く
時間が掛かったのだ。


真耶が自室の時計を見て、自分が思ったより
長い時間休憩していた事を知った


「いつの間にかこんな時間に・・」
そのまま自室を出ると、まるで待っていた様に
ジョンが声を掛けてきた
「やあ、もう良いのかい真耶君?」


気楽に自分に声を掛けてきた男を見て
真耶は例の遅刻してきた外人さんだと思った


「え~えと・・確かジョン・スミスさん
でしたね?」
真耶の言葉にジョンは嬉しそうに
「ボクの名前を覚えてくれていたなんて
感激だな~君みたいに素敵なガールと
知り合えて最高にラッキーだよ」


ジョンの親しげな態度も顔の良い
金髪碧眼の外人だと迫力が違う
大人しい真耶には少々刺激が強すぎる相手だ


「あ・・あの・・少し急いでいるので・・
私はこれで・・」
真耶は逃げるようにその場を後にしようとしたが


「あっチョット待ってくれないか真耶君!」
真耶はそう言って呼び止められた
    !?


誠矢は響を後に残し談話室を出てからそのまま
真耶の様子が気になって見に行くことにした
「おい真耶」


真耶の部屋の前で声を掛けノックをするが
返事がない
「あれ?真耶の奴・・出かけたのか?」


すると後ろに人の気配を感じ誠矢が
振り向くと 其処にはジョンスミスが立っていた。


「やあ大城隊長・・真耶君なら外に出て行ったよ」


誠矢は怪訝な表情で
「どうしたスミス・・頬が赤いぞ」
その手形は小さいので女子の物だと推察できる。


ジョン・スミスは腫れた頬を掻きながら
「ついさっき・真耶君にぶたれたのさ・・
だけどああ言う気の強い反面 脆さがある娘は
ボクの好みさ」


其れを聞いた誠矢はスミスに無言で
拳を突き出した
「真耶に何をしたスミス!」


スミスは誠矢が拳を寸止めするのを知って
いたかのように微動だにしない


そのまま互いににらみ合う二人だが
少し間をおき誠矢が拳を納めた
「良く俺が拳を止めると解ったな」


ジョン・スミスは真剣な眼差しで
「一発貰う覚悟なら最初から出来てるさ
ボクが本気だと解ってくれたかい誠矢」


誠矢は腕組みをしてジョン・スミスを見据えた
真耶のことになると本気に成る誠矢だが
この男には騎士道精神があると感じた


「ああ・・但しフェアプレイで
響と競ってくれ頼むぜジョン」
この男ならきっと響には良い刺激になる


ジョンは響の名を出され肩を竦め
「了解したよ、でもあの彼にボクの
ライバルが務まるのかな?」


誠矢は苦虫を噛み潰した顔になる
「日本には下駄を履くまで解らないと言う
ことわざがあるんだぜジョン」


ジョン・スミスは再び肩を竦め
「勉強になったよ」
と言いながら余裕の態度で去っていく


誠矢はジョンに聞いた通り 真耶を捜しに
外に出た、基地の敷地内とはいえ以外に広い
それでも直ぐに真耶の啜り泣く声が聞こえてきた


声を頼りに探すと建物の影になった
目立たない場所に、膝を抱えながら泣いている
真耶を見つけた「真耶 探したぞ」


「誠矢兄さん」
真耶は誠矢に、ジョンにキスを
迫られそうになったので、思わず
平手打ちをしたと告白した


誠矢は腰に手を起き冷静に真耶に聞いた
「それで真耶はジョンをどうしたい?」


真耶は誠矢が抱きしめて慰めてくれると
思っていたので思わず戸惑ってしまう
「ど・・どうしたいって・・?」


誠矢は指の骨をパキパキと鳴らしながら
「真耶が望むならジョンの奴を足腰立てなく
してやるが」と、物騒なことを言い出した


真耶は慌てて
「そ・・其処までしなくても大丈夫よ
兄さん・ジョンさんもう罰を受けてますから」


真耶はそう言って平手打ちの真似をしてみせる
まあこの様子なら大丈夫なんだろう
誠矢が真耶の頭を優しく撫でてやると
幸せそうな表情を見せた。


翌日
地底基地にハヤテ搭乗員達が結集し
いよいよアステロイド作戦が始まる。


「注水開始」「注水85パーセント」
「サブエンジン始動」
春吉 総科学長が指示を出すと


響竜一 総運行長がエンジンを点火した途端
ハヤテのエレメージェバイト・エンジンの
駆動音と低周波振動が体に伝わってくる


地底800メートルに建設された
この秘密基地は太陽系防衛隊の中でも
最重要機密の一つとなっている


ハヤテを乗せた移動ハンガーは
そまま地下かからトンネルを通り
海抜800メートルの深さがある
海中まで移動して其処からレールを
15キロ進んで一気に海上まで運ぶのだ


響は更に発進シーケンスを続ける
「サブエンジン・カタパルト指導10秒前」


想像を絶する水圧の驚異を
ハヤテが乗り越えられるのは
超高密度アウイナイト製の装甲と
小型の駆逐艦サイズだから
こそ出来る荒技だった。


その設計力の凄まじさは
他の戦艦の追従を許さない
例えハヤテと同サイズの艦でも
同様の事をすれば、この時点で
圧懐するのは間違いないのだ


「メインエンジン始動!」
響はハヤテのメインエンジンである
エレメージェバイト・エンジンに点火した


「ハヤテ発進!!」
勝艦長の号令が轟く


ハヤテはそのまま大気圏を目指して
急激に上昇していく


「大気圏離脱!」
ハヤテは地球の重力を軽く振り切る


そして勝艦長が命じる
「響!アステロイド作戦空域に一気に
リープせよ!!」


ハヤテは駆逐艦サイズでありながら
補助エンジンユニットなしでリープ可能な
機能まである
駆逐艦のエンジン出力では弱すぎて
リープ航法は到底不可能なのだが
驚愕することにハヤテには可能なのだ


通常は戦艦出力のエンジンユニットを
補助輪にして
駆逐艦等はやっとリープ出来るというのに
一言で言ってハヤテは規格外の
化け物なのだ


響は操縦パネルを操作しリープを起動する
「ハヤテ・リープします」
ハヤテは青い光の筋を後に残しながら
華麗に宇宙を跳躍した。


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