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挿絵~小説~

~王家の船~ ・神風型宇宙駆逐艦ハヤテ PAT0・1(前編)

春吉進一郎に案内されて誠矢達4人は
戦闘機ハンガーに向かうと


誠矢はそこに一際輝くように感じる
ある戦闘機を見た


それはスペース・ユニコーンと言う
大城誠矢の隊長専用機であった


誠矢は自分の愛機となる機体に手で触れ
優しく撫でてやりながら
「これから頼むよ・・相棒」


命を預ける愛機なのだから
誠矢がこうした行為をするのも解る
これがエース大城誠矢と愛機
スペースユニコーンの出会いだった。


「さあ次に向かおう」


やがて春吉に案内された4人は
ハヤテ艦内をざっと見回って終わった。


駆逐艦内部の案内時間に
半日掛かる不思議さよ


第一司令室(第一艦橋)に帰り
そして階下の居住第一区間に降りて
各人に割り振られた部屋に入室する


廊下を挟んでこの居住区間には
18部屋が用意されていた。


誠矢の部屋はエレベーターに
最も近い部屋の一つだ


中にはいると駆逐艦の部屋では
あり得ない広さの部屋があった
「さすが隊長格の部屋だな・・
シングルベットそしてトイレに
シャワールームまで・・ん
このテレビ・モニター・・?」


そのとき画面が映り響の顔が
モニターに映し出された


「ぅお!」
誠矢は反射的にビクッとなる


「やあ誠矢 部屋の具合はどうだい?」
響が開口一番そう聞いた


「普通にホテルの豪華な部屋だな
お前の部屋も似たようなものだろ?」


響は自分の部屋が見えるように
体をズラしてみせる
予想通り同じグレードの室内だ
「やっぱりな」


二人の次に言う言葉は恐らく
同じだろう
「幾ら何でも豪華過ぎる!」×2


その時誰かがドアの外でノックする音が聞こえ
ドアを開けると、そこに真耶が立っていた


「誠矢兄さん!入って良い?」


誠矢はドアの入り口から後ろに下がり
「どうぞ」と言って真耶を通した


誠矢も部屋に戻りそしてモニターを見ると、
もう画面が消えている
何だ響の奴・・もう少し待てよ


そう思っていたら再びドアをノックする
音が聞こえる・たっく
こいつらマジ、インターフォン鳴らせ


そしてドアを開けると其処には
髪をとかしおめかしをした
響が立っていた・・・・


「何だ響・・早く入れよ」
解りやすい奴だな
響は部屋の一点を見てぼーっとしている


こいつの視線の先にいるのは真耶だ
3年も前からこの調子だ


仕方ないので真耶に
「少し席を外してくれ響に話がある」


真耶は「はい」と答えて退室した
その後を響の目が追っている


「おい響!」
誠矢もさすがにこれ以上は放って置けない
と思い背中を押すことにした


「このヘタレ」


その言葉に口を尖らせ
「何だよう~」
とこちらを伺う響に


「何だようじゃない!」


さすがに腹が立つぞと言う
誠矢の指摘に響は
「そうだな・・」と覇気無く答える


二人はワゴンテーブルを挟み
四角いソファーに対面に腰掛けて
飲み物を冷蔵庫から出して
グラスに注ぐと話を始めた。


「俺にとって真耶は今や、たった一人の
残された家族・・大切な妹だ・・」


響は誠矢の話を真剣な表情で聞いている
「ああ・・解るよ」


「俺は亡くなった叔母さんに約束したんだ
真耶が結婚するまで見守りますとな」
その目には魂から誓う者だけが放つ
輝きがあった


響は親友のその目に嘘は絶対付けない
「確かに誠矢は摩耶ちゃんをどんな時も
必ず守ってきた・・7年前にも」


響の回想の中で、幼い真耶が近所の
悪ガキ共に親が居ないと虐めを受けた時
誠矢はそいつらを片っ端からボコボコにして
全員泣かせたのを思い出す


「それ以来摩耶ちゃんの後ろには
ヤバイ兄鬼がいるって噂になったけ」


誠矢は過去の黒歴史をほじくり返されて
少し慌てたように
「ま・・まあその話はともかく・・だな
何とか叔母さんとの約束は守れそうだと
言おうと思ったんだ!」


響はキョトンとして
「?どう言うことだ・・」


誠矢は目を丸くして
「鈍ーーーい奴だな・・」
少し懲らしめようか・・


「どうやらあいつに好きな奴が
出来たようなんだ」
誠矢がそう言うと響が血相を変え詰めより


「何だって!一体何処の誰なんだ!!?」
そう言って誠矢の襟首に掴みかかる


誠矢はニヤリと笑うと
「嘘だよ・・お前が真耶をどう思っているか
それを試してみただけだ」


響は膝の力が抜けた様になり
ソファーに腰から落ちた
「何だ・・脅かすなよ」


誠矢は倒されたグラスを見ながら
それを拾い上げる
「まあ此でお前の気持ちは解った」


響はそれを聞くと顔が真っ赤になる
「意地の悪い奴だなお前も・・」


軽い電子音が鳴り人工音声が
部屋の主の誠矢に艦内より
通信が入ったと告げた


「大城戦闘隊長ですね?」
部屋に設置されたテレビモニターに
映し出されたのは


何処かの映画女優かと思えるほどの
華やかな印象を持つ美女だった


誠矢は表情を引き締めて返事を返す
「そうだが・・君は?」


するとその美女が優しく微笑み
「どうも始めまして滝川鏡子と言います
私はサイバドック隊の隊長を務めさせて
いただいています」


サイバドック隊・・
機械化犬がメインの特殊部隊だな
「それでは俺の部下だな」
誠矢は率直に聞いた、変に回りくどく聞くのは
今後のためにも成らない。


「そうです」
滝沢鏡子には逆にそれが
好印象を与えたようだった


誠矢が滝沢鏡子に用件を聞くと
「実はそちらにサイバドック7号が
行ってないでしょうか?」


突然何を言い出すんだ?
「い・・いや・・来てないが」


滝沢鏡子はそれを聞くと少し安心した
表情になり 「そうですか・・失礼しました」


それだけ言うと、こちらが訳を問いただす
前にそそくさと通信を切った
「おい!」


通信モニターの役目を終えたテレビの
黒い画面に唖然とした誠矢と響が映る


「何なんだ・・」
どうも自分の部下は癖の強い奴が
多いようだ・と誠矢が苦笑いを
響に見せていると


甲高い女の悲鳴が聞こえた
「この声は真耶だ!」


誠矢と響は一つのドアから
ほぼ同時に出ようとして
互いの肩が挟まると言う
とんだドジぶりを発揮する


首だけ伸ばして二人は真耶の
名を叫ぶが・其処に見えるのは・・


一匹の犬が真耶の足にすがりつき
尻尾を激しく振りながらジャレツいている
光景だった ポカンとする二人


その犬は良く見るとサイボーグ犬の様だ
「どうしたんだ真耶?」


「部屋を出るといきなりこの子が
飛びついてきたからビックリしちゃって」
そう言いながら真耶はサイボーグ犬の
頭を撫でている


するとそのサイボーグ犬は
「脅かしてすみませんでした」と言った


「こいつ喋りやがった」
響の台詞に誠矢が
「ロボットなんだから喋るくらい
するだろう」


「何しに来たんだこいつ?」
響の当たり前の疑問にそのロボット犬は
「どうも初めましてボク7号
隊長の隊長がどんなん人かを見に来たよ」


滝沢の調教に問題があるのかそれとも
こいつが単にポンコツなのか・・
今日はフレンドリーファイヤーを
何発も喰らった気分だな
問題山積みだが・・何とかやってるよ
父さん母さん。


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